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働き方

保育士の派遣という働き方|時給が高い理由と3年ルールを整理

「派遣って時給が高いらしいけど、なんだか不安定そう」——派遣保育士に対して、多くの人がこの二つの印象を同時に持っています。この記事は、派遣という働き方の"性格"を、雇用のしくみ・時給が高い理由・働ける期間のルールという3点から整理します。正社員やパートとどう違うかの全体像は保育士の働き方の種類で扱っているので、ここでは派遣そのものを一段深く見ていきます。

先に結論 派遣保育士は雇用主が園ではなく派遣会社で、時給はパートより高めに設定されることが多い働き方です。ただし同じ職場で働ける期間は原則3年(労働者派遣法の期間制限)。時給の高さは、賞与・退職金や「同じ園で長く」という継続性と引き換えという性格があります。選ぶときは時給より先に「いつまで・どんな条件で働きたいか」を決めるのが軸です。

派遣の最大の違いは「雇用主が派遣会社」であること

正社員もパートも、雇い主は働く園(や運営法人)です。派遣だけは違います。雇用契約を結ぶ相手は派遣会社で、園は「派遣先」。給料の支払いも、契約条件の交渉も、就業中の相談も、窓口は派遣会社になります。この一点が、時給の高さや期間の区切りといった派遣らしさの、すべての出発点です。

だから「園に直接雇われるより、間に会社が入るぶん条件が明確」という利点と、「園の正規のチームには入りにくく、担任などの中心的な役割は持ちにくい」という側面が、同じ理由から生まれます。

時給が高めなのはなぜか

派遣の時給がパートより高く見えるのには理由があります。賞与や退職金が基本的に含まれない前提で、そのぶんが時給に寄っていること。そして、勤務条件が契約で区切られていること。裏を返すと、高い時給は「安定や継続と引き換えに前払いで受け取っている」と読むほうが正確です。

派遣で得やすいもの引き換えに手放しやすいもの
時給の高さ・条件の明確さ賞与・退職金(含まれないことが多い)
勤務地・時間を選びやすい同じ園で長く働く継続性
園と直接の雇用交渉が不要担任など中心的な役割・園内での立場

一般的な傾向の整理。実際の条件は派遣会社・契約により異なる。時給の下限は地域の最低賃金(令和6年度・全国加重平均1,055円)。

時給そのものは地域や園で幅がありますが、下限はどの働き方でも最低賃金です。令和6年度の最低賃金は全国加重平均で時給1,055円。派遣はここを上回る水準で設定されることが多い、というのが実態で、金額の詳しい相場はパート側と合わせてパート保育士の時給相場で整理しています。

「3年ルール」——同じ職場で働ける期間には上限がある

派遣を考えるうえで外せないのが、労働者派遣法の期間制限(いわゆる3年ルール)です。これは派遣で働く人を守るための仕組みで、二つの単位で効いてきます。

単位内容
事業所単位派遣先の同じ事業所で派遣を受け入れられるのは原則3年まで(過半数労働組合等の意見を聴けば延長可)。
個人単位同じ人が、派遣先の同じ組織単位(課など)で働けるのは3年まで。

出典:労働者派遣法(厚生労働省)。派遣可能期間が切れる翌日を「抵触日」と呼ぶ。派遣元で無期雇用されている人や60歳以上の人などは、この期間制限の対象外。

つまり、同じ園の同じクラスにずっと派遣で入り続ける、という働き方は原則できません。期間の区切りは制約でもありますが、「区切りがあるからこそ気軽に始めやすい」という面もあります。ここが正社員との性格の分かれ目です。

派遣を選ぶ人は、実は多数派ではない

派遣は目立つ働き方ですが、希望する人がとても多いわけではありません。令和4年度の東京都保育士実態調査で、復職や就業のときに希望する雇用形態を聞くと、「派遣」を挙げた人は過去に就業経験がある人で7.0%、就業経験がない人で4.3%。いずれも1割に届きません。

希望する雇用形態で「派遣」を挙げた割合(複数回答):
過去に保育士就業経験がある人 7.0%(n=2,241)/就業経験がない人 4.3%(n=4,720)

出典:東京都福祉局「令和4年度東京都保育士実態調査」(復職・就業する場合の希望条件・複数回答)。「正規職員雇用」「パート・非常勤」を挙げる人のほうが多い。

この数字は「派遣が良くない」という意味ではありません。むしろ、多数派が選ばないぶん、目的がはっきりしている人には合わせやすい選択肢だと読めます。求人倍率3.10倍という売り手市場(保育士の有効求人倍率参照)で、働き方を選べる立場だからこそ、派遣という区切りのある入り方も現実的になります。

資料を読んで気づくまひる
💡 まひるの着眼点|派遣は「戻る前の助走」に向いている

期間制限を「デメリット」の欄に入れて読むと、派遣の使いどころを見落とすと気づきました。

私が資料を読んでいて面白いと思ったのは、派遣の「3年で区切られる」という制約が、ブランクから戻る人にはむしろ利点になり得ることです。いきなり正社員で担任を持つのは重い。でも派遣なら、期間を区切って現場の勘を取り戻し、園の空気を確かめてから次を決めるという助走ができる。雇用主が派遣会社なので、就業中の相談窓口が園の外にあるのも、久しぶりの復帰では安心材料だと思います。派遣を希望する人が1割に満たないのは、良し悪しではなく「知られていないだけ」の面もある気がします。時給の数字より先に、「何のために・いつまで」を決める。そこが決まると、派遣が向く人かどうかは自然に見えてきます。

ここは正直に。派遣にはっきりしたデメリットもあります。賞与・退職金がない契約が多く、長期の収入では正社員に届きにくいこと。契約期間があり、更新されない可能性があること。園の正規のチームに入りにくく、行事や運営の中心からは外れやすいこと。ここで挙げた希望雇用形態の数値は東京都の調査で、全国や個々の求人にそのまま当てはまるものではありません。賞与・社会保険・交通費・契約更新の条件は派遣会社ごとに差があるので、必ず個別の契約内容で確かめてください。

最後に

派遣保育士は、雇用主が派遣会社で、時給が高めな一方、同じ職場で働けるのは原則3年。時給の高さは継続性や賞与との引き換えです。まずは「収入・時間・期間・責任のどれを優先したいか」を一つ言葉にするところから始めてみてください。働き方の全体像は保育士の働き方の種類、パートとの時給比較はパート保育士の時給相場、ブランクからの戻り方はブランクから保育士に復帰するにはで続けて整理しています。

参考データ(出典)
・労働者派遣法(厚生労働省)——派遣可能期間の制限(事業所単位・個人単位)・抵触日・期間制限の例外
・東京都福祉局「令和4年度東京都保育士実態調査」(復職・就業する場合の希望する雇用形態・複数回答)
・厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」(令和6年度・全国加重平均1,055円)/こども家庭庁「保育士の現状と主な取組」・厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」(有効求人倍率)
※本文中の数値は上記公的資料に基づく概況です。時給・賞与・契約条件は派遣会社・地域・時期により異なります。契約内容は必ず個別にご確認ください。