保育士の志望動機・面接——「辞めた理由」から逆算する園の見極め方
志望動機を考えるとき、多くの人は「どう自分を売り込むか」に頭を使います。でも保育士の転職では、それと同じくらい「この園で長く働けそうか」を面接で見極めることが大事です。この記事は、実際に辞めた人のデータを出発点に、志望動機の組み立て方と、園を見極めるための逆質問を整理します。売り込みと見極めは、同じ面接の両輪です。
「辞めたい理由」と「実際に辞めた理由」はずれている
まず、園選びの前提になるデータから。令和4年度の東京都保育士実態調査を見ると、いま働いている保育士が「辞めたい」と考える理由と、過去に辞めた人が「実際に辞めた」理由は、順位が入れ替わっています。
| 退職を考える理由(現職) | 実際に辞めた理由(退職者) |
|---|---|
| 給料が安い 61.6% | 職場の人間関係 31.5% |
| 仕事量が多い 54.0% | 仕事量が多い 23.1% |
| 労働時間が長い 35.4% | 給料が安い 22.1% |
| 職場の人間関係 30.1% | 健康上の理由 20.6% |
出典:東京都福祉局「令和4年度東京都保育士実態調査」。左=現在就業中の者が退職を考える理由、右=過去に保育士就業経験がある者が退職した理由(いずれも複数回答)。
頭の中で「辞めたい」と思う一番の理由は給料。でも実際に人を辞めさせる引き金の1位は職場の人間関係(31.5%)でした。ここに、園選びの落とし穴があります。給料は求人票の数字で比べられますが、人間関係は求人票のどこにも書いていない。見えて比べやすいものに気を取られ、実際に辞める原因になりやすいものを確かめ損ねる——これを面接でひっくり返すのが、賢い受け方です。
志望動機は「なぜこの園か」を具体で語る
そのうえで、志望動機の作り方です。避けたいのは「子どもが好きだから」で止めてしまうこと。それは応募者の多くが共有する前提で、園ごとの差になりません。軸は「なぜ保育士か」ではなく「なぜこの園か」。園の保育方針や特色と、自分の経験・大事にしたいことを結びつけて語ると、具体性が出ます。
- 園の方針・特色を1つ選ぶ見学や園の資料から、共感できる方針や取り組みを具体的に一点だけ引く。
- 自分の経験と結ぶその方針に対して、これまでの経験や自分の保育観がどう重なるかを言葉にする。
- これからどう関わりたいかで締める入職後にどう貢献したいかを、等身大の一歩で示す。大きく盛らない。
この3つを一本の筋に通すと、志望動機は「テンプレの決意表明」から「その園にしか出せない具体」に変わります。売り手市場(保育士の有効求人倍率は3.10倍)だからこそ、園側も「長く働いてくれそうか」を見ています。具体的な志望動機は、その安心材料にもなります。
最後に
志望動機は「なぜこの園か」を具体で。そして面接は、売り込むと同時に園を見極める場です。実際に辞めた理由の1位が人間関係だという事実は、求人票では見えない部分こそ確かめるべきだと教えてくれます。辞めどきや円満な辞め方は保育士を辞めたいと思ったら 辞めるタイミングと円満退職、確かめたい「1人が何人みるか」は保育士の配置基準とは?年齢別の人数と令和6年度の改正を整理、選べる立ち位置の裏づけは保育士の有効求人倍率は3.10倍——全職種1.20倍と比べて読むで扱っています。
・東京都福祉局「令和4年度東京都保育士実態調査」(退職を考える理由/退職した理由・複数回答)
・こども家庭庁「保育士の現状と主な取組」(令和7年12月)/厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」(有効求人倍率)
※本文中の数値は上記公的資料に基づく概況です。調査対象・地域・時点により実態は異なります。園の雰囲気や相性は、見学など複数の情報を重ねてご判断ください。
退職理由のデータを求人票と重ねて読むと、面接で聞くべきことが逆算できます。
わたしは園で働いた経験はないので、現場の空気そのものは語れません。でも辞めた理由の1位が人間関係、2位が仕事量だという事実は、面接で何を確かめるべきかをはっきり示していると思います。給料は求人票で分かる。だから面接の限られた時間は、求人票では見えないものに使いたい。たとえば「職員の年齢構成や平均勤続はどれくらいですか」「クラスは何人を何人でみていますか」「持ち帰りの仕事や残業は実際どのくらいですか」。これは詰問ではなく、長く働くための確認です。答えを渋る園か、具体的に説明できる園か——その反応自体が、いちばんの情報になります。