保育士試験の合格率は約27%——難しさの正体は「9科目一括」(令和5年度)
「保育士試験は合格率2割台の難関」と聞くと、身構えてしまいます。でもこの数字、一度で全部に受からないと落ちる、という意味ではありません。この記事は、保育士試験の合格率を公的データで確かめたうえで、その数字が低めに出る本当の理由——筆記の科目数と合格基準の作り——までほどきます。数字の背景が分かると、独学や働きながらでも計画が立てやすくなります。
保育士試験の合格率は何%か(令和5年度・公的データ)
まず数字から確かめます。こども家庭庁の「保育士試験の実施状況」によると、令和5年度は受験申請者66,625人に対して合格者17,955人。合格者数を受験申請者数で割ると、およそ27%です。前期・後期の2回に分けて実施されており、それぞれ約2〜3割で推移しています。
| 令和5年度 | 受験申請者数 | 合格者数 |
|---|---|---|
| 前期(1回目) | 34,380人 | 9,612人 |
| 後期(2回目) | 28,683人 | 7,553人 |
| 合計 | 66,625人 | 17,955人 |
出典:こども家庭庁「保育士試験の実施状況(令和5年度)」。合計には一部自治体の地域限定保育士試験を含む。合格者数÷受験申請者数はおよそ27%。
ここで一つ、数字の読み方の注意です。合格率は「合格者数を、申請者数で割るか・実際の受験者数で割るか」で数字が動きます。この記事は公表されている受験申請者数を分母にした概数を示しています。約27%という数字そのものより、なぜ2〜3割で安定しているのかを見た方が、対策の役に立ちます。
合格率が2〜3割にとどまる理由——筆記9科目の「一括」ハードル
難しさの正体は、一発勝負であることではなく、範囲の広さと合格基準の作りにあります。保育士試験の筆記は9科目。保育原理や子どもの保健、子どもの食と栄養、保育実習理論など、内容の異なる科目を横断して、それぞれで6割(原則100点満点中60点)以上をそろえる必要があります。1科目でも6割に届かなければ、その回はそこで止まります。
さらに「教育原理」と「社会的養護」は、各50点満点で両方6割を同じ回で満たす必要がある、いわゆるセット科目。範囲が広いうえに、取りこぼしを許さない設計になっているため、1回で全科目を一気にそろえるのは簡単ではありません。これが、合格率が2〜3割にとどまる主な理由です。
合格した科目は3年間有効——だから「積み上げ」で受かる
ただし救いがあります。一度合格した筆記科目は、原則3年間有効です(一定の要件でさらに延長される制度もあります)。つまり1回目で6科目、2回目で残り3科目、というように分けて合格を積み上げられる。筆記9科目をすべて通過すると、音楽・造形・言語の3分野から2分野を選ぶ実技に進み、こちらも各6割以上で合格です。
筆記9科目を各6割 → 実技2分野を各6割
合格科目は3年間有効(要件により延長あり)
1回で全部そろえる必要はなく、数回に分けて通過するのが標準的な受かり方。合格率の低さは「難問だから」より「一度に全部そろえるのが大変だから」に近い。
出典:こども家庭庁「保育士試験の実施状況(令和5年度)」ほか公的資料。試験科目・合格基準・科目合格の有効期間の制度に基づく。
最後に
保育士試験の合格率は約27%(令和5年度)。低めに見えるのは一発勝負だからではなく、筆記9科目を各6割でそろえる構造だからです。合格科目が3年間有効なしくみを使えば、数回に分けて積み上げられます。資格を取ったあとのキャリアの伸ばし方は保育士のキャリアアップ研修とは?処遇改善等加算との関係を整理、給料の見取り図は保育士の給料はいくら?平均月給・年収・手取りを公的データで整理、就職先を選ぶ立ち位置は保育士の有効求人倍率は3.10倍——全職種1.20倍と比べて読むで扱っています。
・こども家庭庁「保育士試験の実施状況(令和5年度)」
・保育士試験の試験科目・合格基準・科目合格の有効期間に関する制度(児童福祉法施行規則等)
※本文中の合格率は受験申請者数を分母にした概数です。分母の取り方・年度により数値は異なります。試験制度は改正されることがあるため、最新の受験の手引き等をご確認ください。
実施状況の表を眺めていて、この数字をどう受け取るかで挑み方が変わると感じました。
わたしは保育士試験を受けた立場ではないので、勉強の肌感覚までは語れません。でも制度の作りははっきりしていて、約27%は「1回で全科目そろえた人の割合に近い」数字であって、一生で受かる人の割合ではない。科目合格が3年間残るしくみを前提にすれば、働きながら2〜3回に分けて通過していく計画が現実的です。数字の低さに気圧されるより、「今回はこの科目を確実に取る」と分解して積み上げる——制度がその受け方を認めているのだから、そこを味方につけるのが賢いと思います。