保育士の離職率は9.3%——「高い」の通説を公的データで検証する
「保育士は離職率が高い」——転職を考えるとき、この一言が不安の種になります。でも“高い”は何と比べての話なのか、意外とあいまいなまま流れていきます。この記事は、保育士の離職率を公的な数字で確かめ、通説がどこまで本当かを検証します。数字そのものより、辞めた理由の中身のほうに、園選びのヒントが隠れています。
保育士の離職率は何%か
まず全体の数字から。厚生労働省の社会福祉施設等調査をもとにした集計では、保育所で働く常勤保育士の離職率は9.3%。同じ調査で採用率は14.9%なので、辞める人より入る人のほうが多い——全体としては人が増えている状態です。
| 区分 | 離職率 |
|---|---|
| 常勤保育士 全体 | 9.3% |
| うち公営 | 5.9% |
| うち私営 | 10.7% |
出典:厚生労働省「社会福祉施設等調査」(平成29年時点)をもとにした「保育士の現状と主な取組」掲載データ。常勤保育士の採用率は14.9%。
ここで効いてくるのが公営5.9%と私営10.7%の差です。同じ「保育士」でも、運営主体で離職率はほぼ2倍違う。全国平均の9.3%だけを見て「保育士は1割が辞める仕事」と丸めると、この差が消えてしまいます。数字を見るなら、平均より“ばらつき”のほうを見たほうが、園選びには役立ちます。
なぜ辞めるのか(離職の理由)
離職率の数字は「どれくらい」しか教えてくれません。「なぜ」を見るには別の調査が要ります。東京都の実態調査では、辞めた理由の上位はお金より先に人間関係でした。
| 保育士を辞めた理由(上位) | 割合 |
|---|---|
| 職場の人間関係 | 31.5% |
| 仕事量が多い | 23.1% |
| 給料が安い | 22.1% |
| 健康上の理由(体力含む) | 20.6% |
出典:東京都「令和4年度東京都保育士実態調査」(複数回答)。
1位が人間関係、2位が仕事量。給料は3位です。つまり辞める理由の多くは、求人票の金額欄には出てこない。ここが離職率を読むうえで一番大事なところだと思います。数字が「高い/低い」で終わらせず、辞めた人が何につまずいたのかを見ると、次に確かめるべきポイントが変わってきます。理由の掘り下げは志望動機・面接——辞めた理由から逆算する園の見極め方にまとめました。
最後に
保育士の離職率は9.3%で、通説ほど突出して高くはない。ただし公営と私営で2倍近く違い、辞める理由の1位は給料ではなく人間関係——ここに「平均を見ても分からない、園ごとの差」が表れています。離職率は覚える数字ではなく、園に聞き返す数字。辞めたい気持ちの整理は保育士を辞めたいと思ったら、不足の全体像は保育士不足はどれくらい深刻かで扱っています。
・厚生労働省「社会福祉施設等調査」(平成29年時点)/「保育士の現状と主な取組」掲載の離職率・採用率
・東京都「令和4年度東京都保育士実態調査」保育士を辞めた理由(複数回答)
※本文中の数値は上記公的資料に基づく概況です。離職率は運営主体・地域・時期により異なります。
全国平均を暗記するより、目の前の園の数字を聞くほうがずっと役立ちます。
全国9.3%という数字は、正直そのままでは自分の転職判断に使えません。公営と私営で2倍違い、園ごとの幅はもっと大きいからです。だからわたしが有用だと思うのは、見学や面接で「直近の退職者数」「勤続年数の分布」を聞くこと。売り手市場なので、この質問は失礼になりにくい。答えをはぐらかす園と、数字で正直に答える園では、それ自体が定着への姿勢の差として表れます。離職率という言葉に不安を感じるより、その言葉を園に投げ返して確かめるほうへエネルギーを使ったほうが、後悔の少ない選び方になります。